プロ野球は分業化が進み、投手は勝敗の数だけでは評価を決められなくなってきました。
先発投手の安定が勝敗に関係することはもちろんなのですが、近年中継ぎの重要性がより高まってきています。
そんな中継ぎの評価を可視化できるようにしたものが、この記事で解説するホールドとホールドポイントです。
是非ホールドの意味を理解して、今よりもっとプロ野球を楽しみましょう!
ホールドとは
ホールドとは、野球においてリリーフ投手(救援投手)が規定の条件を満たすことによって得られる記録です。
リリーフ投手(救援投手)とは試合開始から投げている先発投手の後に投げる投手全員のことを指します。
元々1969年からアメリカで救援投手の評価としてセーブが公式記録として採用されてきましたが、徐々に中継ぎ投手というよりも最終回だけを締める役割である抑え投手が出現。
抑え投手という言葉ができはじめた頃から、先発投手と抑え投手をつなぐ役割として中継ぎ投手という言葉が使われ始めました。
そしてセーブの意味合いは抑え投手に向けた記録へと変わっていってしまいました。
もともとセーブは救援投手全員に対する評価記録だったのに、徐々に救援投手の中でも抑え投手だけの記録になっちゃったということですね。
現在のセーブは勝利投手でない選手がゲームの最後を締めるという前提で、以下の条件を満たせば記録されます。
①登板時に3点差以内で1イニング以上投げてリードを守ったまま試合を終える。
②点差関係なく、3イニング以上を投げてリードを守ったまま試合を終える。
③登板時のランナーの+2点差以内で登板し、リードを守ったまま試合を終える。
セーブは最後にマウンドに立っている人に与えられる記録ですね。
セーブについて詳しくはこちらを参考にしてください。
セーブが抑え投手の記録となってしまっては、中継ぎ投手に対する評価記録がない、ということで1986年にアメリカで考案されたのがホールドです。
記録数とか何か目標がないと、中継ぎ投手を誰も続けたがりませんよね。
日本のプロ野球では1996年からパリーグで使用を開始し、2005年から両リーグで使用されることになりました。
1996年~2004年のセリーグではリリーフポイントという評価制度を使用していました。しかしポイントの計算がかなり複雑だったようで、2005年から両リーグともホールドに統一されました。
ホールドの意味
ホールド(Hold)は英語で『保つ』という意味の言葉ですので、救援投手の評価記録として『保つ』ことが求められています。
そのためリードをそのまま保つ、試合展開を保つ、ということから付けられた記録名です。
ホールドを満たす条件
ここでは日本のプロ野球におけるホールドの条件を紹介させていただきます。
ホールドを満たすには、まず以下の最低条件を満たす必要があります。
①先発投手、勝利投手、敗戦投手ではなく、セーブもついていないこと
②自チームの最終アウトをとった投手ではないこと
③登板してひとつ以上のアウトをとること
④降板した後で自身の自責点によって同点または逆転されないこと
まずこれらの最低条件を満たしていることを前提として、次のいずれかを満たした投手にホールドが記録されます。
自チームがリードしている状況
リードしている状況で登板した場合、ホールドを記録されるには少し条件が複雑ですね。
①3点以内のリードがある状況で登板し、1イニング以上投球しリードを保ったまま降板する。
②対戦する2打者に連続本塁打をもし打たれたら同点または逆転される場面で登板し、リードを保ったまま降板する。
③点差は関係なくリードした状況で3イニング以上投げて、リードを保ったまま降板する。
ホールド=保つ、ですのでリードを保ったまま降板するというのが重要ですね。
同点の状況
リードしている場面での条件は複雑でしたが、同点の場合はわかりやすいです。
①同点のまま無失点で降板する。
②登板中に自チームが得点して勝ち越した場合、リードを保って降板する。
②の場合、勝利投手になってしまうと先述した最低条件に当てはまらなくなってしまうので、勝利投手になっていないことがホールド条件です。
ホールドは1試合で何人も記録できる
勝ち投手やセーブは1試合に最高でも1人しか記録できないのに対して、ホールドは条件を満たせば何人でも記録することができます。
条件をクリアさえしていれば、自チームが負けてしまおうが中継ぎ投手にホールドがつきます。
チームが弱くてもつく記録なのであれば、中継ぎ投手はモチベーションを保てますね。モチベーションも保てるなんてさすがホールド(保つ)😂
ホールドポイントとは
ホールドポイントはセパ交流戦が始まったことから考案された記録で、ホールドと救援勝利数を足した数字です。(HPと略して表記します)
救援勝利は試合開始時から投げてはいないけど、勝利投手になることです。自分が投げてから自チームが逆転したり勝ち越すと救援勝利となります。
中継ぎとして登板しても勝利投手になった時点でホールドはつかないので、その分を補う形でホールドに追加します。
このホールドポイントは最優秀中継ぎの選考基準として採用されています。
ホールドポイントはメジャーでは使用されていません。
ホールドのプロ野球記録
ホールドは通算で200ホールドを達成すると連盟の表彰になりますが、名球会の入会条件にホールド数が入っておらず、現在は中継ぎ投手が名球会に入るのは非常に難しいと言わざるを得ません。
名球会に投手が入る条件:通算200勝または通算250セーブ
先発投手が中5日、6日で投げることが一般的となった現在では、通算200勝は非常に難しいです。なのでヤクルトの石川投手には是非頑張って欲しいですね。
シーズン記録
1シーズンにおけるホールド最多記録をセパともに見ていきましょう。
年度 | 球団 | 名前 | ホールド数 |
2021年 | ヤクルト | 清水 昇 | 50 |
2012年 | 日ハム | 増井 浩俊 | 45 |
我らがヤクルトの清水投手がセリーグのシーズン記録、そしてパリーグは日ハムの増井投手がシーズン記録を保持していますね。
最優秀中継ぎ投手は救援勝利を足したホールドポイントが最多の投手に与えられるタイトルですが、2021年の清水投手は53HPで最優秀中継ぎを受賞し、2012年の増井投手も50HPで最優秀中継ぎを受賞しています。
通算記録
ホールドの通算記録でセパ両リーグ合わせて5位以内をみていきましょう。
順位 | 名前 | 通算ホールド数 |
1位 | 宮西 尚生 | 393 |
2位 | 山口 哲也 | 273 |
3位 | 浅尾拓也 | 200 |
4位 | S.マシソン | 174 |
5位 | 五十嵐亮太 藤川球児 | 163 |
藤川球児さんは通算セーブ数243で歴代4位となっていながら、ホールド数でも歴代5位なのはすごいですね。
そして歴代1位の宮西投手は2023年シーズンも日本ハムファイターズに所属し現役でプレイしています。
宮西投手はどこまで記録を更新できるのか楽しみですね。
ホールドポイントのプロ野球記録
続いてホールドポイントのプロ野球記録をみていきましょう。
シーズン記録
年度 | 球団 | 名前 | HP |
2010年 | 中日 | 浅尾 拓也 | 59 |
2012年 | 日ハム | 増井 浩俊 | 50 |
パリーグは2012年増井投手でホールドの記録保持者と同じですが、セリーグは2010年の浅尾投手でHPは驚異の59です。
2010年の浅尾投手はホールドが47でしたので、救援勝利数が12もあるということになります。
先発投手でもなかなか二桁勝つことは難しいのに、中継ぎでこれだけ勝つなんてものすごいですね。
2010年の中日は落合監督が率いている時代で、リーグ優勝を果たした年でもあります。
チーム内最多勝利投手はチェン投手で13勝、それに次ぐのが12勝の吉見投手と浅尾投手です。
浅尾投手は1試合も先発で登板していないのに12勝です。その年の中日は「浅尾投手が投げると逆転する」という雰囲気だったのかもしれませんね。
落合さんが監督時代の話をまとめた『嫌われた監督』はいろんなエピソードが書かれていて面白いです。ぜひ一度読んでみてください。
通算記録
では次にHPの通算記録を見ていきましょう。
順位 | 名前 | 通算HP数 |
1位 | 宮西 尚生 | 430 |
2位 | 山口 哲也 | 324 |
3位 | 浅尾拓也 | 232 |
4位 | 藤川球児 | 218 |
5位 | S.マシソン | 201 |
ホールドの通算記録とほとんど同じですね。
5位の五十嵐投手がいなくなり、藤川投手とS.マシソン投手の順位が入れ替わっています。
そして1位はHPもいまだ現役の宮西投手ですので、通算記録は更新中です。
最後に
この記事では中継ぎ投手の評価記録であるホールドとホールドポイントについて解説させていただきました。
このホールドのおかげで、中継ぎ投手たちもモチベーションを高く保ちつつ日々の試合に臨むことができます。
先発投手や抑え投手に比べると少し地味な存在かもしれませんが、安定した中継ぎ陣をつくるのは現代野球では非常に重要です。
高校野球でも継投が主流となってきています。
皆さんも贔屓チームの中継ぎ陣をぜひ応援してくださいね。
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